僕は生徒に恋をした
館内放送で手嶋先生を呼び出そうとしたが、運悪く他の先生が電話を使って話し込んでしまった。

直接美術室に行って手嶋先生に伝えるしかないか。

美術室に行くのは気が引けた。

だってもうすぐ部活が始まる時間で、きっと、山田がいるから。

俺は美術室の扉の前まで来て立ち止まる。

中からは想像通り、山田の笑い声が聞こえる。

胃が痛い―――いや、違う。

風邪薬のせいでボーッとしているというのに、かえって頭は冴えていた。

痛いのは胃じゃない。

扉のガラス越しに、山田が俺には見せたことのない笑顔を手嶋先生に向けるのを見てはっきり気付く。

痛いのは、胸だ。

俺は、山田のことが好きなんだ。

だからあの二人のことが気になるんだ。
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