僕は生徒に恋をした
「どうせなら、もっと恋人らしいことしておけば良かった」

恋人らしいことって何だよ、笑える気分じゃないのに笑いが止まらない。

「痴話喧嘩とかしてみたかった」

「いいよ、そんなのしなくて」

俺は声を出して笑ってしまう。
やっぱり山田は、こんなときまで山田らしい。

「キスも、もっとしとけば良かったな」

山田ははにかみながらつぶやいて扉に手を掛けた。

「バイバイ、先生」

俺はなんて単純なんだろう。

その無理した笑顔に引き寄せられるかのように、俺は彼女に口づけていた。

二度目のキスが別れのキスになった。
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