僕は生徒に恋をした
「どうした」

俺は聞き返したが、山田は答えない。

少しの沈黙の後、ふるふると首を横に振り、

「やっぱり何でもない。
送ってくれてありがと」

山田はニコッと笑って扉を閉めた。

ほんの少しだけ、今の山田の笑顔が気にかかった。
山田はあんな風に笑ったっけ。

気にかかったまま、俺は自宅に帰った。

びしょ濡れになった服を脱ぎ、シャワーを浴びてやっと一息つける。

缶ビールを片手に窓の外を見た。
風も雨も、これからもっと強まりそうに思えた。

そして少し落ち着くと、また山田の最後の表情が気になり出した。

もう関わらないと決めたばかりなのに。

あのとき何か言いかけたが、一体何だったのだろう。
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