僕は生徒に恋をした
「何?」

「四年前、少しは私のこと好きだった?」

驚いた。

中村がそんなことを思っているとは思わなかった。

俺は彼女を想像以上に傷付けていたのかもしれない。

「もちろんだよ」

俺は彼女に謝罪の意も込めて言った。

「良かった」

中村はそう言ってまた笑った。

******

休憩が終わり、職員室に向かおうとしたとき、曲がり角で俺たちは山田に出くわした。

「あっ!」

山田はそれだけ言うと気まずそうに俺たちの横を通り過ぎる。

山田が去った後、中村がくすっと笑う。

「あれ、絶対私たちのこと誤解してるね」

俺は何も言えない。

「言っておくけど、誤解を解いてあげるほどお人好しじゃないから」

中村はそう言って歩き始めた。
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