2 in 1

バイト

宇美は部活に入っていなかった。そのかわりにコンビニでバイトを始めた。元々人と接するのが苦手だったが、そんな自分を変えたいと思った。
バイト先は“ヘブンキレブン”という、ふざけた名前だった。時給は680円、夕方5時から8時までの3時間で、週3回の勤務だ。宇美は
「安い。」
と思ったが、店長の酒巻いわく、
「高校生の相場はどこも同じ。」
らしかった。酒巻はまだ30代で若かったが、外見は中年のオッサンみたいで、どこか垢抜けていなかった。短いのにいつも寝癖のついた髪と金縁の眼鏡が印象的だった。まだ独身で彼女はいないようだった。
「余計なお世話だろうが、あれじゃ女はできないだろう。」
宇美の“あたし”がつぶやいた。雇われ店長なので休日も休まずに出勤していた。宇美にとって初めてのバイトはそれなりに楽しかった。唯一声を出すことだけが苦痛だった。シフトは週3日のうち、火曜と木曜日は男子高生の玉城弘樹と一緒で、日曜日は女子高生の安藤力と入った。高校生だけじゃ信用できないらしく、店長の酒巻がいつもバックで待機していた。玉城はジャニーズ系のカッコイイ奴だった。サラっとした長めの後ろ毛が特徴だった。ズボンを腰履きしていた。しかし宇美はジャニーズ系には全く興味がなかったから何とも思わなかった。ただ、宇美とは話が合わなかった。仕事の話以外はしなかった。同級生は話すことが幼かった。宇美の“あたし”好みは年上の頼れるタイプだった。別に外見がおじさんでも人によってはOKだった。いくら男が好きだからといっても、ジャニーズ系のキレイな男は生理的に受け付けなかった。宇美はよくタッキーに似ていると周りに言われていた。多分顔のパーツが整ったつくりだったからだろう。安藤はメイクがバリバリなエロカッコイイギャルで、彼女もまた宇美とは話が合わなかった。
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