キスはおとなの現実の【完】

１２．立ちのみ酒屋とはじめての経験

店のなかは完全に酒屋の裏口だった。
どれだけ譲歩しても玄関と呼ぶのがせいいっぱい。
お世辞にもお店ではない。

横幅は５メートルほどで、おとな五、六人が立ってならべばいっぱいいっぱい。
奥ゆきなんて、くつの長さみっつぶんにも満たないほど。
はっきりいって超がつくほどせま苦しい。

はいってすぐの正面には胸の高さまでの仕切りが立ち、それが店内と裏口を隔てている。

仕切りにはテーブル代わりの一枚板が、バーカウンターのように張られていた。

もっとも胸の高さまで積んだお酒のプラスチックケースのうえに、ぶ厚いステンレス製の長い板が固定もされずにあるだけだ。

正確には天板がただのっかっているだけのようにも見える。