キスはおとなの現実の【完】
わたしは鼻水もよだれも涙もたらしながら言葉を続けた。

「わたしは自分が酒屋だとか、医者だとか、そういうことは関係ないと思います。あとからきた人に追い抜かれるっていうけれど、カズトさんもこのまえのタツヤっていう人も、たんに自分のペースで目のまえの階段をのぼっているだけでしょ。その階段にはどこまでがこどもで、どこからがおとななんていう区切りはないと思います。みんなそのあいまいな階段のうえで、一日いちにちちょっとずつでもおとなになっていくんだって思いますよ。自分は気づかなくても、まわりから見れば毎日ちょっとずつでも変わっていっているっていうか……」

カズトさんはわたしを見つめて目をほそめて笑った。
そしてやさしい口調でいう。
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