キスはおとなの現実の【完】
うしろからきた人たちにあっさりと追い抜かれてしまうけれども、どうすることもできずただまっすぐに階段をのぼっていく以外にない。

それがカズトさんの生きかたなんだ。

そんなふうに思うと、時間を忘れて現実を味わったわたしの目からは、また理由なき涙があふれてきた。
新たな涙は頬をつたい、重ねたくちびるのなかに流れこんでくる。
それがますます甘くない塩気を感じさせる。
< 195 / 224 >

この作品をシェア

pagetop