『短編』5分前
5分前



こたつに入りながら、みかんの皮をむく。


ふいに足を伸ばしたら、誰かの足にぶつかった。


「これ、誰の足?」


視線をテレビに向けたまま、みかんを一房、口に放り込む。


「お父さんですぅ」


日本酒を飲んで、できあがりつつある父がにやりと笑う。


「サイアク」


思わず足を引っ込めた。


「足が当たったくらいで、最悪はかわいそうでしょうよ」


そう言って、母は湯呑にお茶を注ぐ。


そんな会話をよそに、


「しばらく演歌続くから、今のうちに風呂入ろ」


中学生の弟が立ち上がった。

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