銀杏


自転車に乗り、通勤や通学の時間を過ぎても探した。
道行く人はジロジロ俺を見る。
頭がおかしいと思われたかもしれない。

昼近くになってやっと家に戻ると、母さんのお小言。
みっともない、恥ずかしい、何を考えてるんだ…
盛大な文句を黙ってひとしきり聞いていたら、母さんは最後にこう言い放った。

『結局、雪乃さんは恩知らずな躾のなってない薄情な子だったのよ。息子をたぶらかされなかったのが救いだわ。』

この一言が俺を激高させた。

『…雪乃のこと…悪く言うなー!!』

壁をドンッと叩いて穴が空いた。

『何が恩知らずだ!!
恩知らずなのはどっちだよ!
散々世話になったのはこっちじゃないか!
あんなに仲良くしてたのは上辺だけだったのかよ…。
突然出ていったからって…どうしてそんな手のひらを返したようなことが言えるんだ!
雪乃は薄情じゃない…。
何も知らないくせに…誰にも雪乃を悪く言う権利なんかない!!』




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