銀杏
第八章

二つの事故



―――その年の12月。

「まだかよ?」

「んー、後もうちょい。」

「………行くぞ。」

「あー、待って待って…今…あー!!引っ掛かったあ。取ってえ~。」

「………」

「お待たせ~。」

「……おい、手袋は?」

「あ…忘れた。取ってくる!」

「もういいって。時間ない。行くぞ!」

「ええ~。」

引きずられるように家を出る。

「ほら、走れ!」

「ひいいーっ。」

駅まで走って、来た電車に飛び乗った。

ゼイゼイいってる咲の隣で、少し息が上がった程度の尊は腕時計で時間を確認してる。

何で尊はこんなに楽そうなの?
同じ距離を同じように走ったのに。
私だって鍛えてるのにおかしいなあ。
運動量が違うの?
歩幅が違うから脚の回転数も変わるからかな?

どっちにしてもムカつく。

じっと尊の足元を睨んだ。

「…お前さあ。」

頭上から声が降ってきた。




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