銀杏

忘れていたこと



―――12月。

この前、尊と出会って元気そうで安心した。

でも何だかほっそりしたように感じたのは気のせい?
それに寂しそうに見えた。

私に逢えなかったから?な~んて、そんなことある訳ないか。
毎日一緒に生活してた……
そうだ、尊と一緒に住んでたんだ。
何で今はお父さんと?
入院したのは何でだっけ?

…何か大事なことを忘れてるような気がする。
何だろう。



もやもやした気分が晴れないまま時が過ぎていく。

お父さんと一緒に行った銀杏並木に、今度は一人で出掛けた。

葉は随分散って、足元が隠れてしまう。
ブーケのように束ねてみた。
幼い頃はうまく束ねられなくて、できたと思った瞬間バラバラと手からこぼれ落ちた。
半泣きになった私のために葉をかき集めて、頭上へ撒き散らした。
あれはお母さんだとずっと思ってた。

でも違うことに気づいた。

あれは尊。
私を泣かすまいと幼いながら一所懸命だった。




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