銀杏


「…狡い。教えてよ…泣くのは私だけ?男だから泣かないの?私は…弱いの?」

「あのな……」

二人だけなのに尊はわざわざ耳元でこっそり教えてくれた。
二度と言わないと言って。

尊の言葉を聞いて可笑しくてケラケラ笑った。

プライド。

男のプライドってよくわかんない。
一生のうち男が泣くのは3回で、それは生まれた時と親が死んだ時、後は財布を失くした時だって。

古くさ!

この時代にまだそんなこと言ってるなんて。
笑い過ぎて涙が出た。

そしてそのまま静かに泣いた。

尊の優しさが伝わる。
家族として、スポーツをする人間として、そして何より愛する人として、改めて尊を選んでよかったと思った。




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