四竜帝の大陸【青の大陸編】
「ヴェル。なぁ、お前……」

我は気づくと、地面に転がっていた。
青い眼に映った我の姿を見て、その事に気づいた。
身体を浮かべようとしたが、手足に力が入らない。

酷い脱力感。
だが、不快ではない。
むしろ心地よいというか……。

<青>は我を指でつついた。
つつかれた我はそんなことはどうでもよく、眼を閉じて……。
眼を閉じても浮かぶのは、りこ。

我を好きだと、大好きだと言った。
我が1番なのだと言ってくれた。
そんなりこに我が感じたのは‘食欲’だとは。

血の匂いのせいか?
いったい……我はどうしてしまったのか。

「ふ、ふははー! 積年の恨みを思い知れ! とうっ!」

<青>の短い足が我を踏みつけるのを感じたが、我は眼を開けることすら面倒になり好きにさせることにした。

「なんというか。卑怯なんじゃないですか? 陛下」

 ダルフェか。

「こんなチャンス、10万年待ったってこないぞ? お前も記念に踏んどけよ」

 =ダルフェ。聞きたいことがある。

「旦那?……意識はあるんですね? どしたんです」

 =カイユに‘食欲’を感じたことはあるか?

「食欲? ハニーに?」

 =我はりこに‘食欲‘を感じている最中だ。身体が動かんのはりこを守ろうとする防衛機能が無意識に働いたためだと思う。りこの血液の匂いを嗅いでから変なのだ。

「あぁ、なるほど。そういうことですか。ちなににハニーに‘食欲‘を感じたことは無いです。が、食べられてしまいたいとは常々考えてます」

 =カイユに喰われたいと?

「ええ。ハニーは俺より寿命が長いですから。俺は土に還るなんてごめんです。ずっとハニーと居たいんです。1つになってしまいたい」

 =我は……。

「ま、俺のことは置いといて。‘食欲‘の件ですが俺が推測するに旦那は‘欲望‘に免疫が無さ過ぎるんですよ。姫さんと居るようになっていろんな事を感じたり、望んだり……今までの旦那は‘無関心‘と‘無欲‘で‘存在‘していた感じでしたから。姫さんに好かれたいとか、幸せにしたいとか触れたいとかね。普通の事が旦那にとっては全部が‘初めて‘だったわけだ。そりゃ〜、混乱しますよ。‘欲望‘に慣れてないんですから」

 =混乱。

「初めて嗅いだ‘つがい‘の血に過敏に反応したんです。程度の差はあれ雄竜なら‘つがい‘の体液には本能を揺さぶられるもんですよ。そのうち慣れますって」

 =りこには……知られたくない。りこに‘食欲‘を感じたなど。

「あの姫さんなら……知っても旦那から離れたりしないと思いますがねぇ。ま、旦那はこれから‘育って‘いくんですよ、きっと。姫さんと一緒にね」
 


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