四竜帝の大陸【青の大陸編】
ごっくん。

私がそれを飲み込むと、ハクちゃんはバイロイト支店長を睨むのを止め、金の眼を満足そうに細めた。

「うむ。でかしたなバイロイトよ。生きるのを許す」

出た、出ましたよ~天井しらずの上から発言がっ!

「こらっ、ハクちゃん! ごめんなさい、支店長さん。お世話になってるのに迷惑ばかりかけてしまって……」

今日の午後に起きたら、知らない場所だった。
目覚めて最初に見たのは金の瞳。
いつもと同じように、おはようの挨拶をして……。
あ、いつもとは違ったんだっけ!
ハクちゃんが人型だった。
しかも、しかもぉ!
思い出すと、こっ恥ずかしさにのた打ち回りそうだよ、うう~。

私、ハクちゃんの上だった。

長椅子に横になったハクちゃんを、敷布団にしてましたー!
ハクちゃんがにこりともしない無表情フェイスでおはようって言うから、こっちが照れるのもなんだしと平静を装って私もおはようって言ったけど。
内心は……その、えっと、うん。
察していただきたいのです。

「トリィ様。2日間も絶食なさった後ですから、重たいものは味見程度にして下さいね。さ、こちらは終わりですよ」

ナ~イス!
さすがカイユさん!
感謝です!
カイユさんは謎の物体Xを自然な感じで下げ、優しい香りが食欲を刺激するリゾットとポタージュ、そして小ぶりなプリンが乗ったトレーを私の前に置いてくれた。
眼だけで感謝を伝えると、カイユさんはちゃんとわかってくれた。
軽く頷き、ハクちゃんに言う。

「ヴェルヴァイド様。もう、バイロイトは下がらせましょう。かれーは彼のお手柄ですから約束通り、彼以下支店従業員の処分は不問に。よろしいですね? 行っていいわ、バイロイト支店長」

私も詳しいことは説明されていないから、よくわからないんだけど。
なんか手違いがいろいろあって、ハクちゃんがぷりぷりしてたらしく……。
ハクちゃんのぷりぷりって……怪我人も物損壊も無くて良かった!
私の寝たきり(?)状態が心配なハクちゃんは他の事が全て後回しになり、暴れることも無く大人しかったのが幸いしたようだった。

「わかった。我は処分しない。カイユに任せる」

私の横の椅子に座っていたハクちゃんはトレーからスプーンを取り、リゾットへ無造作に突っ込むとぐるぐる回した。
激しく、ぐるぐるぐるぐる回す。
これって、もしかして冷ましてるつもりなのかな~。
そんなに乱暴にぐるぐる……あぁ、こぼれてる!

「りこ。あ~んだ。あ~ん」
 
はい?
 
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