四竜帝の大陸【青の大陸編】
ハクちゃんのせいで、この部屋は壊滅状態になってしまった。
まあ、竜帝さんが止めを刺したって感じだけど。
あの惨劇の中。
ダルフェさんはテーブルクロスを引き抜き、料理にかけていたためにご飯は無事だった。
凄すぎます、ダルフェさん!
床にめり込んだ鉄鍋に冷たい視線を落として、ダルフェさんはカイユに言った。

「ハニー。ここはもう駄目だ。姫さんを駕籠に連れてってくれ……料理は俺が持ってくよ」

いろんな意味で呆然とする私を抱き上げて、カイユさんはさっさと部屋を出た。
屋上へ続く階段を軽やかな足取りで進み、昼間に見た駕籠の扉を開けて中に入り、駕籠の一番奥にある寝室のベットへ私を降ろしてくれた。

「準備をしてきます。私が迎えに来るまで、ここでお待ちくださいませ」

そう言うと足早に部屋を出て行き……行かなかった。
視線を下に落とすと開けた扉を勢い良く閉め、私の方を向いて言った。

「トリィ様。ご許可下されば、カイユが竜体になって‘あれ’をトラン火山に捨ててまいりますが? 私が最速飛行すれば、あそこまでは数時間ですし」

は?
あれ?
捨て……って、まさか。

カリ。
カリカリ。
カリカリカリ……。

猫がドアをひっかくような音がした。
まさか!?

「りこ~、りこぉおおお」

念話。
私はベットから慌てて扉に走り、開けた。
そこに居たのは、蓋をした鉄鍋。
底の部分から、白い鱗に覆われた2本の足が突き出ていた。
小さな真珠色の爪には木屑が……この扉と同じ水色の。

「ハ……クちゃん?」

絶句した私にカイユさんが言った。

「どこへ捨てても戻ってきますね、これは。……いっそ、どこかへ埋めてしまいましょうか?」
「え、えっと。あのっ……」 

あきれたように言ったその顔は……柔らかな笑みを浮かべていた。

「トリィ様のお好きなようになさいませ。‘これ’は貴女様のモノですから」

足の生えた鉄鍋を掴んで無造作に部屋に放り投げ、カイユさんっは静かに扉を閉めた。
カイユさんの足音が遠ざかると、寝室には私と……。

「すまぬ、りこ。<青>に探させたが重石が、そのっ……どうしても見つからなかった。せっかくりこがのせてくれた重石だったのに。不甲斐無い我を許してくれっ」

足の生えた鉄鍋と2人きり。
なんなの、この状況は……。

「……ぶっ!」

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