四竜帝の大陸【青の大陸編】
「りこ。あ~ん」

小さな手に握られたフォークが、私の口に苺に似た果物を運んだ。
形は苺なのに色は紫のそれは、巨峰の味がした。
巨峰って、大好き。

「カチはりこの嗜好に合うか? 先程のオルの実とどちらが好みだ?」

左右にゆらゆらとしっぽを揺らし、テーブルの上から私を見上げるきらきらお目々。
小さな竜が身体に不釣合いなサイズのフォークとスプーンを使っている姿は、めちゃくちゃラブリー!
天国極楽。
まさにファンタジー!

「カチのほうが好きかな。でも、さっきのも美味しかった。もうお腹いっぱい」

カイユさんと私で、ダルフェさんの作ってくれたご飯をなんとか完食。
すごい量だったけれど、カイユさんがほとんど食べてくれた。
長身で細身の身体のどこに、あんなに入るの?
カイユさんは私の数倍は軽く食べてしまうのよね。

「ご馳走様でした。ハクちゃん、ソファーでころころしててね。食器を洗ったらテーブルを片付けるんだから。分解して床下に収納するんだって……あ、カイユ! 私がやります」

私は食卓にのっていたハクちゃんを、ソファーに座らせた。

「うむ。ころころして待てば良いのだな? 承知した。ころころするぞ」

ころころ。
意味、わかってるのかな?
ま、いいか。
可愛いから!

4人は軽く座れそうなソファーで何故かでんぐり返しを始めたハクちゃんを残して、私はカイユさんと食事の片付けを開始した。
ワゴンに食器をのせ、厨房に移動しす。
厨房は居間に隣接されていて、廊下に出なくても移動できる配置だった。
8畳ほどの広さに備え付けの食器棚や作業台・流しに……オーブンつきの焜炉。
離宮の厨房には、薪を使う石釜もついていた。
焜炉は同じタイプで少し、小ぶりなサイズ。
この世界のエネルギー事情はさっぱり分からないけど、これは凄いと思う。
私にも見慣れたガスコンロ風。
使い方も簡単。
レバーで点火・消火そして火力の調節をする。
違うのは燃料。
五徳の下に、不透明な赤い石が埋め込まれている。
これが火の元。
ダルフェさんが前に説明してくれたけど、詳しいことはよく分からなかった。
火と術式。
固化がどうのこうのって。
この燃料は持ち運びもでき、安全性も高くて便利。
ただ、高価なものらしい。
むむ~。
使用するさいは、節約を心がけましょう!
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