四竜帝の大陸【青の大陸編】
小腹が空いたと訴えた俺様に、バイロイトが菓子を出してきた。
飯を食いたかったが、取りあえず出されたそれを口に放り込んだ。
謎の形をした焼き菓子は、見た目と違って味はまぁまぁだった。
支店の幼竜がおちびの為に作った菓子は、優しく素朴な味がした。

「なあ、バイロイト。俺様は乳が大きい女が好きだ。けどよ、あのでか乳皇女はごめんだ。10000ジンの金を積まれても無理、嫌だ」
「お金大好きの貴方がそこまで言いますか。皇女、なかなかの美女でしたが……相変わらず口が悪いですね、社長。子供達の前では下品な言葉は許しませんよ、竜帝像が崩れてしまいます。あぁ、ラーズ達は明日には目覚めるはずですから、その前に帝都に帰って下さいね、陛下。あと第二皇女の件ですが今後の動向には注意を払っておきます」

バイロイトはこめかみを指で軽く叩き、続けた。

「まあ、人間の女の嫉妬は恐ろしいと聞きますし。あの皇女が彼の愛人だったとは。知っていれば違ったアプローチでお嬢さんの自覚を……」
「じじいが言うには、愛人じゃないってよ。じじいの感性は俺ら常識人には理解できない域に達しているぜ。継続的肉体関係を結び、あらゆる贅を貢がせておきながら……」
 
おちびの所に戻る前に。
皇女に話を付けに……別れ話に行こうと提案した俺様に言いやがった。

何故だ? 
何故、我がりこ以外に時間を使う必要がある?
別れ話?
言っている意味がよく分からん。
我は非常に忙しいのだ。
重石だ、重石。
りこが我にのせてくれた大事な、重石だぞ!
重石を探せ、重石!
 
おかしいって。
俺様が、竜帝が重石……漬物石を探すのか?
て、いうか。
じじいよ。
でか乳は漬物石以下なんだな。

「じじいは、昔っから何考えてんのか分からなかったが」

俺様が餓鬼の頃。
じじいは庭の一点に視線を置き、ずっと動かない事があった。
微動だにせず。
丸3年間、突っ立ってた。
どんなに話しかけても無反応で。
3年たってやっと返事をしたじじいに、俺は理由を聞いた。
じじいは言った。

ーーこの葉に虫がついていた。虫と虫につかれた葉がどうなるのかを見ていたのだ。

虫? 
葉?

両親が死んで大泣きするいたいけな俺様を完全に、シカトぶっこいた理由が?
蛇竜になってしまった同属を殺して自己嫌悪に落ちいった繊細な俺様の嘆きを一切無視した
理由が?
 
虫と葉っぱ。
そんなもの数日で決着ついてたんじゃないのか?

じじい曰く。
虫と葉っぱの攻防は3年間で数回繰り返され、目を離す暇がなかったらしい。
 
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