四竜帝の大陸【青の大陸編】
ハクちゃんはこのお城に詳しいみたいで、新しい部屋の位置をダルフェさんに聞いたらすぐに術式で連れて行ってくれた。

瞬きと同じ早さで景色が切り替わる。

「ここ? ……わあっ!」

そこは、別世界だった。
明るく暖かな光に満ちた緑の空間。
眩しいほどの陽の輝き。
見上げると、ドーム型の天井から澄んだ空が見えた。

「これって……温室?」

しかも、すごく広い。
中央に長方形の池。
水音……近寄って覗くと小さな赤い魚が数匹泳いでいた。
尾とヒレが長くて、まるでドレスを着ているみたいな綺麗な金魚。
静かな水面には、睡蓮のつややかな葉が浮かんでいた。

「姫さん、あそこの扉の向こうが居住区だよ。居間・寝室・洗面所・衣装室・納戸・書斎あと簡単な厨房設備もある。風呂だって離宮よりでっかいのがあるんだぞぉ」
「え、あの、ここに住むの?」

な、なんか凄すぎないかな!?
私的にはワンルームとかで良くてですねっ。
こんなに広くて、光熱費とか水道代とか私に払えるんだろうか!?
それに、そんなに大きなお風呂じゃ、掃除とかが旅館並みに大変なんじゃ……。

「ダルフェ。あ、あの……私、ここは……」

心配が言葉と顔に出てしまった私に、ダルフェさんが説明してくれた。

「ま、細かい事は気にすんなって。南棟の維持管理は専門の者達がする。姫さんは手を出すなよ? 素人には無理だし、人の仕事を取るもんじゃない。姫さんには姫さんのやるべきことがある」
「私の? あ、勉強ですね」
「あ、う~ん。そうじゃなくて」

ダルフェさんは苦笑した。
あれ?

「勉強もだがね。1番はあの困ったチャンの相手だなぁ」
「……こまっ? あぁー! ハクちゃん、なにやってんのよっ!? きゃーっ」

大きな布袋をどこからか持ってきた白い竜は、私が止める間も無く小さな手で袋を左右に切り裂いた。
パンパンになっていた袋はその中身が一気に弾け出し、きらきら輝く真珠の雨が温室の中に降り注ぐ。
それは太陽を反射してきらきら光り、輝く。

「真珠……ハクちゃんの、かけら」

幻想的な光景に見蕩れてしまった私に、ダルフェさんは言った。

「俺達で片付けんのか、これ? 徹夜かよ!?」
 
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