四竜帝の大陸【青の大陸編】

50(おまけの小話あり)

寝具は全く汚れていなかったので、ほっとした。
とても高そうな物ばかりだから、焦っちゃいました。

「りこ。気分は?」

ベットから降りたハクちゃんは床に膝をついて、寝具の汚れを確認していた私を見つめて言った。

「先ほど、りこは我の血に酔ったのだ。見たところ、もう大丈夫そうだが」

血。
酔う?
血に酔うなんて、変。
ま、眼の色が変わったんだし体質もちょっと異世界仕様(?)に変わったの?

セイフォンでハクちゃんも、私の血の匂いでべろ~んってなってたし、眼の色が移るんだから体質も……。
ん?
酔った私?
最悪!
泣き上戸が炸裂しちゃったんじゃないのっ!?

「りこは酷く泣きながら、異界の言葉で喋っていた。なんと言っていたのだ? 人間はああいった場合は記憶力が落ちるのだったな。では、りこも憶えていないのか?」

わたっ、私……うっ!
憶えてます、しっかりと。
酔ったときの記憶が無いっていうのは、必ずしもそうではなくてですね。
人それぞれだし、その時の体調とかも関係しててですねっ。
今回は感情が抑えられなくて、喚いちゃった自分をしっかり憶えてます!
これに関しては、憶えていたくなかったです。

「う、うん」

ハクちゃんは緩やかなウェーブを持つ真珠色の髪をかき上げながら、立ち上がり、内心大恐慌の私へと両腕を伸ばした。

「抱っこだ」

はい?

「今日は休養予定だったのに、あまり休んでないだろう? だから我が抱っこをし、りこに楽をさせるのだ」
「え、でもっ」

その、途中で寝ちゃったし。
結果的にはけっこう寝たんじゃないでしょうか。
抱っこはかえって疲れる気がっ。
だって、さっきの事を思い出して必要以上に意識しちゃう。

「抱っこしたい」

な、なるほど。
単に抱っこしたいだけなんですね?
ハクちゃんって、本当に不思議な人。
交わるとかって平気で言ったり、ちょっと強引に迫ってきたりするのに。
あんなに凄いキスするくせに、私の‘お子様ちゅう’が気に入ってて。

「駄目なのか?」

抱っこされるのも、するのも好きで。
しかも、ほらね?
いまだににぎにぎしちゃってる。
だけど温室で身体に触ってきた時は遠慮ゼロで、恐ろしいほど手早く手際良かった。
こういう事に慣れてる人なんだって、思った。
途中で終了したことについては、全く気にして無いみたいだし。
これが大人の余裕というのかな?
ん? 
大人は靴のままベットに上がらないよね?
ハクちゃんって、大人と子供がごった煮みたいなすご~く不思議な人。

「りこ」

私から動くのを待っている貴方は、ちょっと不安げな瞳をしている。

「誓うぞ! 我は二度とりこを落とさない」

ずっと、気にしてたの?  
あれは暴れた私が悪かったのに。
この歳で抱っこは恥ずかしい。

だけど、特別だもの。
ハクちゃんは、特別。


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