四竜帝の大陸【青の大陸編】
翌朝、私は目覚めると朝のお散歩をするために庭へ出た。
朝もやの残る外は空気が澄み、ひんやりとしている。
息が、白い。

「帝都って、寒いっ」

衣装室から借りた女性物の外套は、内側に柔らかな毛皮が付いていて温かかった。
朝焼けの残る空は、ほのかなピンク。
凛とした空気。
庭は秋色で、セイフォンの緑溢れる庭園とは全く違った。

でも、秋のお庭もとても素敵だと思う。
足元は、黄色や赤の落ち葉。
見上げれば木々に残った葉が、朝日に照らされて……。

「晴れたね、ハクちゃん。今日の夕焼けが楽しみ」
「そうだな。さすがに我も、気象はいじれぬからな」
 
竜体のハクちゃんと、ベンチに並んで腰掛けた。
穏やかで、優しい時間を楽しむ。
そろそろ朝ご飯の支度をしに戻ろうかと……。

「出て来い、ヒンデリン」

ハクちゃんがふわりと飛び、言うと。
木々の間から、1人の女性が現れた。
ダルフェさんと同じ騎士服。
私が見上げるほどの長身……竜族の女性。
眼に焼きつくような群青の長い髪は高い位置で結わえられ、細い身体の背に流れていた。
甘さが一切無い、シャープな顔立ちの女性だった。

「<黒の竜帝>がヴェルヴァイド様にお話があると。それと……では」

ん?
後半はハクちゃんと念話したのかな?
黒って単語、分かったよ……竜帝も。
黒の竜帝さん!?

「お手隙のときに、電鏡の間までお越し下さい」

一礼して、踵を返して去った彼女……ヒンデリンさん?
黒の竜帝さんが、ハクちゃんにお話って、言ったよね?

「ハクちゃん……」

まさか。
青の竜帝さんに怪我させたから、怒られるとか!?

「ふん、面倒だな。<黒>め……。りこ、朝食後に我は電鏡の間に行く。電鏡の間の側には通年花が咲く庭園があるので、そこで待っていてくれるか? すぐに済ませる」

残念。
私は、会えないんだ。
黒の竜帝さんは、真っ黒のちび竜なのかな?
可愛いだろうな~。

「うん、待ってる。いつか私も黒の竜帝さんに会えるかな?」
「いずれは全ての竜帝に会うことになるが……むっ!我のほうが奴等より、数段かわゆいぞ!」

こぶしを握り、いかに自分のほうがかわゆいか力説するハクちゃんは。
やっぱり世界一、かわゆいです。
< 270 / 807 >

この作品をシェア

pagetop