四竜帝の大陸【青の大陸編】
「……?」 

あれ?
ハクちゃんは今までで1番、大人しかったと思うんですが?
挨拶とか、会話とかは、やっぱり無理だったけど……文句の1つも言わなかった。
支店でのお茶会前みたいに、うじうじもしてなかった。
あの時は承諾してもらうのに、けっこう大変で……うう~、思い出すと赤面しちゃいそうだから考えるの止めよう。
今回は竜騎士の皆さんに会うのは「かまわん」って、すんなりオッケーだった。
私の周囲から、他人を排除したがった彼だけど、支店で『結婚』してからそんな態度も少し軟化してきている。
街に私を連れ出してくれる気になるほど、気持ちに余裕が出て……。
良い方向に変わってきたかもって、私はそう感じてたんだけど……あれれ?
心配になり、側に立つカイユさんを見上げた。

「……カイユ」
「トリィ様。気になさらないで下さい。この子達は……緊張しすぎただけですから。ね、そうよね、ダルフェ」

カイユさんはそう言って、ダルフェさんに水色の眼を向けた。

「あ~、まあ、そういうことで。うん。……おい。パス、オフ! お前ら、旦那の人型を見るの初めてだったなぁ? 旦那の顔見て、ちびんのだけは勘弁してくれよぉ?」

ダルフェさんが座り込んだままの少年達の頭を、ぱしぱしと叩いて言った。
ううっ、私はすっかり慣れちゃったけど。
ハクちゃんの顔、確かに怖いもんね……一応、美形なんだけど。
基本的に無表情で、愛想皆無。
甘さのない冷めた美貌は、好感度どころか……いや、でもですね!
よ~く観察してもらえれば、微かな変化があるの。
感情で眼差しも変わるし、目元もちょっと動いたり……けっこう可愛い。
なんたって、ハクちゃんは微笑むという必殺技も習得できたんですから!
 
「……さあ、<ヴェルヴァイド>のお出ましだぜ」

ダルフェさんの言葉に、皆の目が居住区へと繋がる扉に集まる。
内側からゆっくりと開いた扉から。

「……あ」

現れたのは、白。
全てを覆い、染め替える様な強い純白。
 
まるで。
絵本に出てきた、綺麗で冷たい<氷の帝王>と呼ばれた魔物のような。


「……ハクちゃん?」


白い服を着ていても。
貴方はやっぱり、魔王様だった。


なんで黒い服より、魔王様パーセントが上がっちゃうのぉおおお!? 



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