四竜帝の大陸【青の大陸編】
黒い服にこだわっていた貴方。
貴方は、言ったよね?
私が好きだから、黒い服を着るんだって。
今朝も黒を選んだ貴方が、自分の意思で白い服を……。
不安になってしまうのは、私は自分に自信が無いから。
貴方が私を愛してくれてるのは分かってる、知っている。
でも、私……貴方と釣り合うような人間じゃない。
パスハリス君達だって、おじさんに抱えられた私が貴方の妻だと察して……意外そうな表情をしたのよ?
さっきだって、変な挨拶しちゃったみたいだし。
こんな私が、貴方の奥さんで……貴方はどう思った?

「……わ、私……きゃっ?!」

ふわりと身体が浮いた。
私はハクちゃんの大きな手で腰を抱かれて、高く掲げられていた。
まるで“高い高い”をされる幼い子供のように軽々と……。
2メートルを越えた長身のハクちゃんにそうされると、視界がとんでもなく高い。
おちびな私でも貴方の金の眼を、怜悧な美貌を見下ろせてしまう。

「どうした? そのような浮かぬ顔をして」

そう言って。
切れ長の眼を細め、首をかしげる貴方。
蕩けるような優しい金色に、情け無い顔をした私が映っていた。

「ハクちゃん……」
「りこ、我のりこよ。我の可愛い人、愛しい宝物。どうしたら、笑んでくれるのだ? 我はりこの笑顔が大好きなので、笑んでくれるなら何でもするぞ?」

言われたこっちが困るような甘い言葉とおでこへの優しいキスで、ハクちゃんは私の不安をすぐに消してくれた。

「……ハク」

摩訶不思議な思考回路で、デリカシー皆無なハクちゃんだけど。
私の変化に、妙に聡い時もあって。
やっぱりハクちゃんは、大人の男の人なんだと思う。
私は、そんな彼に甘えっぱなしで……。

「ハクちゃん、あのっ……ひゃぁんっ!?」

いきなり。
ぺろりと左頬を舐められた。
その舌は、私が知ってるものより熱かった。
セイフォンに居た時から、ハクちゃんは舌をよく使っていた。
だから普段との違いは、すぐに分かった。

ハクちゃんは私が泣くと一生懸命に涙を舐め、慰めてくれて……。
彼は自分の鋭い爪を、とても気にしていた。
だから柔らかく温かな舌を、手の代わりにしていたんだと思う。
私を傷つけない為に、小さな手をいつもぎゅっと握っていた優しいハクちゃん。
私はハクちゃんが発熱してるんじゃないかと、心配になった。
竜騎士の皆様の視線を気にしている場合じゃないと、ハクちゃんの顔に両手を伸ばした。
おでこや頬をぺたぺた触って、体温を確認してみる。
う~ん?
お肌はいつもと同じ。
ひんやりつるつる、シミ1つ無い完璧な美肌でございます。
おでこにキスしてくれた唇も、いつもと変わらずひんやりしていた。
舌だけが異常なほど熱を持っいるなんて……体調が悪いとか!?

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