四竜帝の大陸【青の大陸編】
「体液にはその個体の情報が詰まっている。唾液のみでもりこの体質や嗜好性、体調や疾患もある程度までは解る」

唾液のみで!?
血液を舐めたら家族構成・学校の成績までばれたりして!
あ、そういえば舐めてたっけ。
お菓子を口に突っ込まれた時!
人間の異性にそんな発言されたら気持ち悪いけど、ハクちゃんは竜だし。
竜には当たり前のことなのかもしれないから、意見するのはやめておこう。
うん。
郷に入ってはなんとかってことわざがあるしね……。

『トリィ様の食事の嗜好を把握なさってるなんて。ヴェルヴァイド様もやっぱり竜族ね。お手が早くていらっしゃるわ。うふふ』

セシーさんが爽やかな時間帯に全く似合わない妖艶な笑みを浮かべ、私に視線を流してきた。
何て言ったのかな、今。……知りたいけど、ハクちゃんに聞くのはよそう。
知らないほうがいい。
うん。
スルーしましょう。

「ごちそうさまでした。おいしくいただきました」

フォークとナイフを置き、セシーさんに軽く頭を下げてみた。
伝わったかな?
あ、頷いてくれた。分かってくれたみたい。
セシーさんが優雅な仕草で呼び鈴を左右に軽く動かした。
あれが正しい使い方ですね、うん。
すぐに侍女さんが2人現れて馴れた手順で食器をワゴンに収納し、テーブルの上には紅茶とクッキーが用意された。
私はハクちゃんに手を伸ばし、自分の膝に座らせて侍女さんの動きを見ていた。
私が抱っこしておけば、ハクちゃんのことが怖くても少しは……。
侍女さんはハクちゃんを、なるべく意識しないようにしているようだった。私の前にカップを置く時に、軽く指が震えてた。
なんか、気の毒かも。

私は衣食住の提供を要求したけど、贅沢をさせろって言ったつもりはない。
侍女さん達を使うような生活じゃなくていい。
ハクちゃんを怖がっている侍女さん達に、お世話をかけるのは抵抗ありますし。
それに……イケメン皇太子君が私の衣食住にかける資金って、つまりは税金でしょ?
国民の収めた税金を、私が浪費しちゃ駄目。
だから、ほどほどでいいんだけど。
ほどほどにたかるつもりなのに。
 
豪華はまずい。
有無を言わせずこんなドレスを着せられちゃったけど。
お姫様になりたいわけじゃない。
お姫様に憧れるほど、若くないです。

身の丈にあった、ほどほどの……ここのほどほど基準値が不明だけど。
早く語学を身につけ、自分の生活を確立しなきゃ。
どうやらハクちゃんは人間の日常生活には疎いらしいから、あてにならないし。
今の状態では侍女さん達に面倒をみてもらわなきゃ、何もできないのが現実だ。

「りこ?どうかしたか?」

膝の上で手足をにぎにぎしながらハクちゃんが、首をかしげた。
うう~、なんて可愛いっ~!

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