四竜帝の大陸【青の大陸編】
「カイユ。カイユがお産から帰ってきたら、相談したいことが……カイユ?」

カイユさんは小さな子供にするかのように、私の頭を優しく撫で始めた。
何度も何度も……。

「カイユ? どうし……」
「あぁ、小さな貴女をまた1人にするなんて。悪い母様ね……許してちょうだい。貴女の弟を産んでくるわ。ふふっ……お腹のこの子も、早く姉様と遊びたいって言ってる。ここから出せって駄々をこねてるわ」

え?
今、なんて……。

「いいこと? 約束してちょうだい。母様が居ない間は、ヴェルヴァイド様から絶対に離れないで。ここから……城から出ては、駄目よ? 私の父様が<害虫>を毎日お掃除してるから、まだお外に出ては駄目なの。もう少ししたら、<害虫>も集まってこなくなるわ。父様はお掃除がとっても上手だから、あとちょっとだけ我慢しましょうね?」

カイユさん?
なんか、言ってることが……どうしちゃったの?
 
「母様? ね、ダルフェ。カイユが……ダルフェ!?」

ダルフェさんは緑の眼を見開いたまま、椅子にストンと腰を下ろしてしまった。
急にどうし……きゃあっ!
ダルフェさんの顔、真っ青!

「なるほどな」

私の隣に座ったハクちゃんは、淡雪のようなムースをスプーンにのせ、私に差し出しながら言った。

「我はカイユをりこの<母親>として、どの大陸に居を移そうと同行させるとしよう。……竜帝共には我から伝えておく。そんなことより……さあ、りこ。あ~んだ、あ~ん」

は、母親?
ハクちゃん……それって、どういうこと!?

「りこ、あ~んだ。ん? どうしたのだ? なぜ、口を開けぬのだ」

恐ろしいほどマイペースな旦那様は困惑する私に、言った。

「ああ、りこはこっちのタルトのほうが良かったのか? それともこの星型のチョコレートか?」

ち、ちが~うっ!

言動がなんかおかしいカイユさんに、真っ青な顔で動かないダルフェさん。
そして、この超天然な旦那様。

だ、だめだ……私1人じゃ対処できない事態だよ!
どうしっ……あっ!

「竜帝さん……。ハクちゃん! 竜帝さんを呼んで来て、お願いっ!」

助けて、女神様!


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