四竜帝の大陸【青の大陸編】
ダルフェさんとカイユさんにはハクちゃんがお鍋に入ったまま行方不明(?)中に、彼には絶対に言っちゃ駄目だって念を押された。
蜜月期の竜族の雄はつがいに対する独占欲が異常に強いので、ハクちゃんに知られたら大変なことになるって……。


「これがりこの教師か。……なるほどな」

温度の感じられない冷たい金の眼で。
シスリアさんを背に庇うように立った竜帝さんに、ハクちゃんはそう言った。
それから徹底して、無視しているのだ。

竜帝さんはため息をつき。
艶やかで気品のある……牡丹のような美しい顔に苦笑を浮かべ、言った。

「まあ。ぶっとばされないだけマシか。ほんと、おちびの前じゃ大人しいっつうか……シスリア、今日はもう下がっていい。……これはメオナにやってくれ。テテの花びらの砂糖漬け、好きだったよな?」

慣れたしぐさでシスリアさんの手をとりソファーから立たせ、金糸でラッピングされた小箱を彼女に渡した。

「はい。ありがとうございます陛下。あの子、大喜びします。……トリィさん、ヴェルヴァイド様。失礼いたします」
「あ、はい!」
 
竜帝さんは彼女をエスコートして、執務室から彼女と共に執務室から出て行き……数分で帰ってきた竜帝さんは、ソファーにどかっと腰を下ろした。
こきこきと首を左右に振り、指の先まで包帯にきっちり包まれた自分の両手を握って麗しいお顔をぐりぐりと押した。

「ん~、眠いなぁ。今夜は早めに寝るかな……おちび、あと2日間は遊んでていいぜ? 当初と状況が変わったから、カリキュラムを組み替える必要があるんだ。詳しい理由はそこの陰険じじいに訊け。午後は他の竜帝達と伝鏡の間で会議だから、早めに飯にすっかなぁ~。ああ、そうだ! しばらくは昼飯を一緒に食おうぜ? 今日の昼は食堂から、おちびの分も持ってくから。先に南棟に戻ってろ」

状況が変わった?
どういうことかな……後でハクちゃんに質問すればいいんですね?お昼、一緒に食べてくれるんだ……にぎやかで、嬉しいな。
 
感謝です、女神様!

「はいっ。いろいろありがとう、竜帝さん」

頭を下げた私に、竜帝さんはつぶやくように言った。

「お前のこと、カイユに頼まれてるし……気にすんな」

はにかむような笑みを浮かべた竜帝さんの青い瞳は、とても澄んでいた。
彼もきっと、いろいろ考えたと思う。
カイユさんのこと、ダルフェさんのこと。
そして、双子じゃなかった赤ちゃんこと……。

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