四竜帝の大陸【青の大陸編】
『殿下。あれが‘つがい‘を得た竜なのです』

この情けない姿が?

『今のあの方は我々の存在など頭になく、娘のことだけ。娘から離れたために、不安でいっぱいなんでしょうね』
『そんな、おおげさな。扉の向こうに居るのにか?』
『‘つがい‘を得たばかりで身体を離す雄竜なんて、普通はいません。あの方だから理性が勝ってるんですわ。しかも相手は人間で、異界人。どう扱って良いやら戸惑ってらっしゃるわ。うふふ……だからそこを利用しましょう』

セシーは不敵に宣言した。

『つがいとなった異界の娘を取り込みます。娘をこちらの味方にすれば<監視者>を抑えられます』

紅の塗られた唇を、自らの舌でぺろりと舐め。

『勝ってみせますわ。この‘戦‘はセシーにお任せくださいませ』

笑んだ。

 

セシーの言った通り、私は死ななかった。
異界の娘が私に望んだのは身の安全と、生活の保障。
そして、ここで生きてくための教育。
ミー・メイには、異世界の家族に手紙を届ける術式。
娘の言葉を伝える<監視者>からは異論はきかれなかった。
つがいとは、こんなに影響力を持つものなのか。
驚きより、恐怖を感じた。

世界最強といわれる竜をこの異界の娘は手に入れたのだ。
彼女の言葉ひとつで世界の行く末が決まるといっても、過言ではない。
 
<監視者>がつがいを得たことは、徐々に世界に広まるだろう。
彼女を唆し、利用しようとする者が多数現れるだろう。
実際、セシーは動き始めた。

王の執務室に行き、ことの次第を報告しつつ策を練る。
父達が無事を喜んでくれるが私は他の事で頭がいっぱいだった。

『父上に申し上げます』

私に何が出来るだろうか?
彼女を人間の欲望から守ることが可能だろうか?

『青の竜帝様にお会いしたい。早急に』
 
助けてください。
義父上様。
 
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