四竜帝の大陸【青の大陸編】
ハクちゃん、なんて言ってるのかな?
早く言葉を覚えて、自分で会話したいな。
学生時代は英語が赤点の私だって、生活に必要ってことになれば頑張れるはず!

『りこはお前と違って慎ましやかなのだ』
『慎ましいと言うより賢いというべきかしら。簡単に取り込めると思ってたのに、残念ですわ』

紅茶色の眼が私をちらりと流し見た。
なんだろう? 
ため息をついてるし。
お、こちらに近寄って……私の左手をとって軽く撫でた。
背が高い……180はあるかも。
モデルさんみたい。

『貴女の手はとても綺麗な皮膚をしているわ。労働をしていない手ね。異界では恵まれた生活をおくっていたはず。こちらでそれ以下の生活をさせるわけにはいかないわ。それに貴女の生活費は殿下の私財を使います。国庫に関係ございません。……ヴェルヴァイド様、貴方様とてトリィ様に苦労をさせたくないはずですわ。貴族の姫のように何一つ不自由無く過ごして欲しいとお考えでしょう?』

彼女は私から手を離さず、顔だけハクちゃんに向けて微笑んだ。
蕩けるような美しさ。
あぁ、彼女から良い香りが……。
甘く艶のある深い香り……この香水は、セシーさんに似合ってる。

『りこが……苦労?』

なんか身体がふわふわしてきた……。
不快じゃないけど、なんか変。

『貴方様は人間の生活に疎い。若い娘を物質的にも精神的にも満足させる術など分かりますまい。第一、金銭さえお持ちで無い。トリィ様を路頭に迷わせるおつもり?』

ふわふわでぽかぽかする。
身体の芯からあったまるというか……。

『トリィ様のためにセイフォンを利用なされませ。セイフォンも貴方様の‘つがい‘の君の後見という見返りがあります。それにダルド殿下は幼い面もありますが慈悲深く、責任感もお強い。トリィ様に総ての私財を消費されようと彼女を邪険に扱うことはないとこの‘魔女‘が保障致しますわ。トリィ様が生まれた世界に帰りたいなどと考えないような満ち足りた生活をセイフォンは提供するとお約束しますわ』

セシーさんにとられた手がじんわり……冷たくなってきた。
身体はぽかぽかしてきたのに、変なの。
どうしちゃったの、私。
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