四竜帝の大陸【青の大陸編】
「ハクちゃん、どうしたの?」

 鏡越しに視線を合わせ、ハクちゃんは答えてくれた。

「りこ。りこは竜体の我をかわゆいと言ってくれる。抱っこをして撫でてくれるし、風呂も一緒に入って体を洗ってくれる。それは我が‘かわゆい‘からなのだろう?」

「え? うん、まあ……」

 ハクちゃんは短い両手で自分のお腹を撫で撫でしながら言った。

「前々から思っていたのだが。……もしや、人型の我には‘かわゆい‘要素が皆無なのではないか?」

 はい?
 え~っと……。

「人型だとりこの好んでいる鱗も無いし、‘ぽっこりしてとっても素敵!‘と言ってくれた腹も‘ぽっこり感‘が失われている。りこの好きな‘かわゆさ‘が見当たらん。……どうしたら人型の腹をこのように‘ぽっこり‘にできるのだろうか?」

 ぽっこりお腹?

 人型のハクちゃんのお腹がぽっこり出てたら……メタボなハクちゃん?
 あの外見でお腹がぽっこりなんて、想像……うわあぁ~(汗)!

「な……な、なに言ってるの!? お腹がぽっこりしてなくたって、ハクちゃんはかわゆいよ!」

 私は非常に焦った。
 これは、久々のいじけモードだ。
 なんで、急に……。

 あ。

 今日のお茶の時間は竜帝さんの執務室にお呼ばれして……カイユさんとダルフェさんが留守中は竜帝さんと1日1回、お茶をすることになったのだ。
 で。
 竜帝さんが私に、ハクちゃんのどこが好きなのかって質問した。
 だから、答えた。
 熱く語りましたとも!

 ハクちゃんがどんなに可愛いか!!

 そうしたら。
 竜帝さんが「お、おちび! わかった、もういい。訊いた俺様が悪かったっ!」って、ハクちゃんの可愛い所を次々に言う私を止めたのだ。
 私はもっと言いたかったのに。

 あれ?
 今、思うと。
 私は人型については、特に何も言ってな……っ!? 

 あの時隣に座っていた人型のハクちゃんは、クッキーを右手で摘んで私に差し出した格好で……止まっていた。
 私が喋ってるから、あ~んを待っててくれてたのかと思ってたんだけど。

「ハ、ハクちゃん! えっとね、私……」

 鏡の中のハクちゃんは金の眼を、ぎゅっと閉じ。

「すまぬ、りこ。我にはわからぬ……人型の腹を‘ぽっこり‘させる方法が」

 そう言った。

 言葉だけなら、笑えるような内容だけど。
 ハクちゃんは、冗談を言えるような人じゃない。

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