四竜帝の大陸【青の大陸編】
なによ、それ?
どれだけ怖がりなのよ、貴方は!

「大丈夫よ、もしそうなったらとっておきの‘お呪い’でハクちゃんを、起こしてあげるわ。私の世界では有名で、とっても強力な‘お呪い’なの」

私は真珠色の髪を掴んで、ちょっと強引に引き寄せた。

「お呪い? りこはまじないに詳しいな。どうやるのだ?」

首をちょっと傾げるハクちゃんの仕草は、私にとってはかわゆさ満載の大好きな姿だけど。

「内緒。秘密です」

ついさっきまで真珠の涙を流していたのに、もうけろっとしている旦那様には教えてあげない。

「ふむ。では、そうなったら‘お呪い’を 頼む。直ぐにしてくれ、絶対だぞ?」

王子様のキスで、お姫様は目覚める。
私はお姫様じゃないし、貴方は王子様なんかじゃない。

「はい。任せてください、旦那様。ハクちゃん、なにがそんなに忙しいの? 私と会ってからお仕事も特にしてないようだし……暇に見えるんだけど」

仕事かぁ。
大陸移動が決まったから、私の就職の件は保留になってしまった。
ハクちゃんの‘お仕事’……。
<監視者>だから世界中に別荘、(?)を建ててもらって、おまけに貢がれて……いろんな意味でウハウハ独身ライフを満喫してたわけで。

ん?
そう言えば……おんな、女。
この泣き虫君は、とんでもないこと暴露してなかったかぁああ!?

「<監視者>としての‘お仕事’はめったに無いのでな。り、りこ。口元が少々おかしな角度に曲がっておるぞ!? むむっ、そのだなっ! 我はりこをか……いかん、内緒なのだ。まだ内緒だ。うむ、我も秘密なのだ」

挙動不審な動きをする金の眼が、なんかとっても可愛く思えてしまう私は貴方以上に‘変‘なのかもしれない。

「ふ~ん、秘密なの? ま、いいけどね」

秘密。
私も、まだあるから。
貴方の秘密も、そのままでいいの。
 
貴方が私のために、多くの人を殺めると言ったとき。
私の中の悪魔が、歓声を上げた。

私、嬉しいと思ってしまった。


お願い。


もう、これ以上出てこないで……私の中の悪魔。


悪魔《わたし》のキスが、魔王《あなた》を起こす。

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