四竜帝の大陸【青の大陸編】
「花鎖、か」

雌の編んだ<花鎖>でつがいの竜が互いの頭上を飾り、繋がったそれが切れぬように1曲踊る。
切れなければこの1年間、無病息災。
丈夫な種である竜は、めったに病気になどならんのに無病息災とは。

年1回のダンスしたとて、健康を維持出来るほどの運動量など無いだろうに。
つまり、踊る必要性皆無ではないか?
そんなに踊りたいのなら、普段も踊っておればいいのだ。
我のりこを見習え。
りこは健康で長生きするという目標をたて、毎日きちんと体操をしとるのだ。
この我も背を押し、お手伝いをしておる。
 
胡散臭い<花鎖>の舞踏会など、我は全く興味がなかった。
だが、りこは違った。
城の大広間で<花鎖>の舞踏会が行われると聞き、自分も<花鎖>を作りたいと願い出た。
当初は舞踏会に参加する気は無かったようだが、カイユの勧めでりこは参加を決めた。
通常、蜜月期のつがいは参加せぬのだがな……。

1時間ほどで我の頭に乗る分を、四苦八苦しながら編んだ。
だが我との身長差の為に、通常のものより長く作らねばならず本人の想像以上に苦労することになった。

茎から染みでた成分が肌にあわず、手先が荒れてきても。
祈りを込めるかのように、何度もやり直しながら丁寧に編んでいた。
小さな手で、一生懸命編んでいた。

我はカイユが作業の手本を見せた時、りこと共にそれを眼にしていた。
我の頭の中にあるカイユの手の動きを術式で[まね]すれば、簡単に仕上がる。
りこが苦労する必要も、この可愛らしい手を痛ませることなど無い。

だが。
言ってはいけないと、思った。
りこがこうして<花鎖>を作るのは何故なのか……誰の為なのか。
感情に疎い愚かな我だとて、分かる。

ダルフェよ。
これは、我にも分かったのだ。
だから我は言った。

りこの作ってくれた<花鎖>で踊るのが楽しみだ、と。

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