四竜帝の大陸【青の大陸編】
「バイロイトは動かせねぇ。あそこはあの親父以外、幼竜ばっかだし奴には他に……とにかく、メリルーシェからは出せねぇ! おい、ダルフェ~、てめえからもカイユに言ってくれよ。騎士団の頭であるカイユは俺様の側近だって、各国上層部は認識してるんだ。そのカイユが顔を出せばダルドにも箔がつくっていうか、セイフォンを狙ってる奴等への牽制に……」

 陛下は数年間、あの皇太子を手元に置いていた。
 だから奴を贔屓している。

 皇太子というより、あの古い国自体を。

 理由は知らない。
 知りたくない。

「陛下。クロムウェル風に言うなら、俺はハニーの<愛の奴隷>ですからねぇ~。ハニーが嫌だって言ってんなら俺も嫌です」
 
 私と同じ騎士服を着た赤い髪の竜族。
 赤の大陸から来た<色持ち>の竜……私のつがい。
 私はダルフェの子を宿している。
 竜の雄にとって妊娠中の妻は、絶対的な存在。
 蜜月期とこの期間は、竜騎士の性質よりも雄の本能が勝る。
 竜帝の<命令>と妻の私の<お願い>ならば、ダルフェは私の<お願い>を優先してくれる。

「クロムウェルの話はやめてくれ、鳥肌が立つ! カイユ~、頼むから引き受けてくれよ」

 執務室の机の上で、小さな青い竜が地団太を踏んだ。
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