四竜帝の大陸【青の大陸編】
『おっと。危ないねぇ。姫さんが転んで怪我でもしたら、俺は旦那に八つ裂きにされちまう』

私を受け止めてくれたはダルフェさんだった。

『ダ、ダルフェ! へ、変質者は?』
『やっぱりそうきましたか。ろくでもない単語、覚えちゃいましたねぇ』

ダルフェさんは私を床に立たせ、怪我がないか確認してからカイユさんに声をかけた。

『ハニー、休んでなかったの? あぁ、荷造りしてたのかぁ。俺のハニーは働き者だからね』

ダルフェさんはカイユさんの手を取り、いつものようにキスをしようとして……。

『この役立たずが!』

一瞬で床に倒され、カイユさんに背中を踏まれていた。
ひええぇ~!
早業すぎます、カイユさん!

『ハ、ハニー……ぐがぁ!』

鈍い音がしましたよぉ~! 
ちょっと、まずいんじゃ!?

『お前がついていながら、トリィ様がお泣きになる事態が起こるとは! この無能めっ』
『ハニー、泣かしたのは旦那で……ごふっつ』

カイユさんの空色の眼がきらりと光る。

『言い訳はするな! トリィ様に死んでお詫びしろ!』

本気? 
カイユさん!?
ぎゃー! 
やめてやめて~!

『カイユ! だめ、やめて! 怖いっ、やめてぇ』

私は必死でカイユさんにしがみついて、止めた。
半泣きの私を見て、カイユさんが慌てて笑顔を作る。

『ほほ、冗談ですわ! こんなんでもお腹の子の父親ですもの。殺したりしませんわ、まだ』

まだ?
まだ……って何!?

『気にすんな、姫さん。ハニーの愛情表現は激しいんだよ。刺激的だろぉ? 最高だなぁ』

口の隅からもれた血を、慣れた仕草で拭きながら言う彼の笑顔は幸せそうだった。





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