四竜帝の大陸【青の大陸編】
「我はりこが大好きなので、この紙に書けるだけ書き込んだのだ」
「嬉しい、とっても嬉しい……ありがとう、ハク」

手紙を胸に抱いてお礼を言う私の腰をハクの左腕が引き寄せ、2人の距離がまたゼロになった。

見上げる私の頬を、大きな手が包み込む。
ハクちゃんの右手の親指が私の唇を右から左へ、そっとなぞるように動いた。

「……冷たいな」
「そう? 外に居たからかな?」

溢れそうになる涙は、ハクちゃんの恋文を胸に強く抱くことで抑えた。
ハクは私の笑っている顔が好きだと、言ってくれたんだから。
この気持ちに相応しいのは泣き顔じゃなく、笑顔。

「ふむ。こうすれば良いか」

言いながら。

「え……んっ!?」

私の唇に、舌を丁寧に這わせ始めた。

「ん、ちょっ、ハ……クちゃっ」

唇の上をゆっくりと、滑るように動く熱く濡れた感触に。
顔が火照り、指先までもがじんじんと……熱を持ち、疼く。

「肉は冷たい我だが」

自分の持つ熱を。
全て、残さず私に与えるように。
あたたかさが染み込むように、丹念に。

「我の妻が言うには」 

なぞるように。
包み込むように。

「我も舌は温かいようだからな」

離れることなく与えられる、舌の熱さに酔う。

「……ハク」
 
ねぇ、ハクちゃん。 
私が。
もしも、貴方にこの世界を捨てて私の世界に来てって言ったら。
貴方はきっと、躊躇い無くこの手を取ってくれるんでしょう?

だから、言わない。
だから、言えない。 
 
「……明日、スキッテルさんのお店に行ってもいい?」

ハクのかけらで、スキッテルさんにアクセサリーを作ってもらっていた。
出来上がったと連絡が入ったと、ここへ来る道中にカイユさんが教えてくれた。

「りことならば。何処へでも」

差し出した手を、貴方はすぐに握り返してくれる。

「我は、行く」

貴方の黄金の瞳は。
私にとって。
太陽以上に、眩しい。

「ありがとう、ハク」
    
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