四竜帝の大陸【青の大陸編】
『りこ!』

りこはカイユに抱かれたまま、去っていった。

おのれ、カイユめっ。
我だってりこをあのように運んでみたいぞ!

『ハニーを睨むのは止めてくださいよ。さっさと服着て俺らも休憩しましょう。馬鹿馬鹿しい痴話喧嘩につきあわされて俺の硝子の心臓が砕けそうですよ、まったく』

なにが硝子だ。
だいたいお前が……。

『人型の旦那は念話が使えんのでしょう? 言いたいことがあるなら口を使ってくださいよ。そんな凶悪な眼で睨まんで喋って下さい』
『……』
『だんまりですか。姫さんにはぺらぺら喋ってたじゃないですか。やればできるんでしょうが』

我は術式を使い衣類を身につけ、りこの気配を探った。
ふむ。
寝室……ではないな。
あぁ、あそこか。

デルの大木。
りこはその木陰が、気に入りのようだったな。

『姫さんがいないと旦那は以前のままですね。綺麗な面だが死人みてぇに無表情。他人に全く関心のない【美しき氷の帝王】。情など持たない【冷酷なる魔王】。人間共はうまいこと言いますよねぇ』

りこ。

我のりこ。

『見た目は以前のままですが旦那が‘変わった‘のは俺には分かってます』

りこ。
りこ。
りこ。
もう一度。

『だから泣かんで下さいよ』
 

貴女に、触れたい。


『俺が必ず旦那を姫さんの‘夫‘にしてみせます。旦那が赤の竜帝の大陸から俺を連れ出してくれたから‘つがい‘に出会えた。……俺に幸せを与えてくれたのは、ヴェルヴァイド様です』

りこ。
我の愛しい女。

『貴方に永遠の忠誠を。竜帝陛下を裏切ることになろうとも』
 
りこ。
我を拒むな。
 
りこ。
貴女に捨てられたなら、我は狂うだろう。

りこ。
狂った我は、貴女を喰らってしまうだろう。

りこ。
我を離すな。

 
生き延びるために。

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