四竜帝の大陸【青の大陸編】
「カイユとジリギエは置いていきます……どこの大陸で姫さんが見つかるか分からないんで、発見され次第その大陸にカイユとジリギエを直行させます」 
「と、ととっ~!? かか、ジリッ……ぎぎぎゃぁあああっ!!」

俺の言葉を聞いたジリギエが不満げに鳴き、丸めた布を両手を使って俺へと投げつける。
短い足を踏ん張るようにして立ち上がり、翼を広げて威嚇するかのように小刻みに震わせて鈴の転がるような独特な音をたてた。

「こ、こらっ、ジリッ! やめっ……」

その音は特殊な周波数で、聞いた者は耳を押さえずにはいられない不快なものだ。
まだ幼く弱い竜族の幼生が自衛手段として持つ能力で、成長とともに失っていく能力だ。
 
「ぎょぎぎげぇえええ~! ジリ、ととっ!! ぎ・ぎぎ・ぎぎぎぎゃぁあああ!!」

俺は両耳を手で覆いながら、いつになく反抗的な態度に出た息子に怒鳴った。

「いいかげんにしろっ、ジリギエ!」
 
大人気ない気もするが、普通の竜族よりも聴覚の優れている俺にとってはこれはかなり“痛い”。
脳内で鋼鉄製の超小型ハリネズミ数百匹が、大運動会をおっぱじめたって感じだ。

「あ!? なに馬鹿なこと言ってんだ、お前も連れて行けだって!? 父ちゃんは最高速で飛ぶんだぞ!? 餓鬼のお前が一緒になんて、無理だって! ……ん?」  

内ポケットにしまっていた電鏡が、微かに熱を持つ。
熱で伝える型はまだ試作品の段階で、本体強度を五割り増しにすることに成功したものの、温度が一定しないのが問題点だった。
体温より数度上がるだけだったり、熱湯のように熱くなったり。
まだまだ完成には程遠い状態だった。
俺は耳から右手を離し、電鏡を取り出した。
それを見たジリギエは口を閉じ、翼をたたんだ。
ジリギエは幼いがちゃんと分かっている。
仕事の邪魔になるようなことはしない。

「はい、陛下。電鏡の間っすね?」

鏡面に映るのは、俺自身。
新型電鏡は映像を捨て、音声だけを届ける。
情報量を音声のみにしたことで、携帯用サイズでも安定した大陸間通話を可能に……が、目標だ。

「母さ……赤の竜帝陛下から、緊急連絡? 俺を出せって言ってる? 赤の陛下じゃなく? え? すみません、もう少し落ち着いてくださ……はい? 誰がです?」

電鏡越しに、陛下の同様と困惑が伝わってきた。


< 781 / 807 >

この作品をシェア

pagetop