四竜帝の大陸【青の大陸編】
つがいの雌が望まなくても、次々と服や宝飾品を妻に贈る雄が竜族には多い。
年にたった2着新調しただけでも、100年で200着だ。
竜族は長寿だから、総合計するととんでもない数になる。
さすがにそれらを全てを各家庭で収納・保管できないから古い物や飽きた物を手放すのが普通だ。
だから、辺境のバザールで竜族の衣装が売られていたからそこら近辺に姫さんが転移したなんてことは……。

「それがね~、聞いてよカイユちゃん! 通り過ぎる一瞬しか見えなかったけど、まるで“海の欠けらのように青かった”ったんだって!!」
「っ!?」

その言葉に、カイユが硬直した。

「父さん! どうして一番最初にそれを言わないんだよ!?」 

あの日、あの時。
姫さんが着ていたのは――。

「……あ……あの子に着せてあげた……んです。私がっ、陛下が下さったドレスを……私がこの手でっ」

カイユの声は、震えていた。
震えてるのは声だけじゃない。

「そ……それは……青……<青の竜帝陛下>の『青』で……す」

歯が音を立てるほど、その顎が震え。
空色の瞳が小刻みに揺れ、溢れ出した涙が床で弾けた。





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