四竜帝の大陸【青の大陸編】
「…………ダルフェ! なんであの子が、ヴェルヴァイド様に貼り付ける場所に一人で居たの!?」

激昂するカイユとは逆に、俺はジリギエが手足の一つも失っていない状態だったことに安堵と確信を得ていた。
ジリギエは旦那にとって『生かす価値』がある。
そのことが、これではっきりと分かった。

姫さんが生きている『世界』がある限り、ジリギエを旦那は殺さない……殺されない。
俺がいなくなっても、ジリギエには最強で最高の守護者が……。

「え? あ……俺が旦那の側にジリを置いてきちまったんだ。飯食いに行けって言っておいたんだけど……すまないっ、ハニー……ぐごぶっ!?」

言い終わらぬうちに右頬に鉄拳。

「この役立たずが~っ!!」

頬骨を砕くその威力に、俺の意に反して床から両足が浮く。
舞い散る歯の本数を確認する間もなく、俺の横腹へカイユの右足。

「ぎゃあああっ! <黒>用の電鏡にぶつかっ……それいくらすんと思ってんだ!? 軌道修正しろ、ダルフェ!」

色恋より金勘定が好きな美麗竜帝の悲鳴を聞きながら、俺は<黒の竜帝>用大型電鏡に激突した。
降り注ぐ電鏡の破片の間から、俺は見た。
見てしまった。
真珠色の爪を持つ白い指先が、黄色いひよこの頭部へと吸い寄せられるのを……。

それ、あんたが被ったって可愛くないですよっ!?



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