四竜帝の大陸【青の大陸編】
「行け、カイユ!!」

まるでカイユから逃げるかのように、よろめくきながら数歩後退し。
床へ膝をついて叫んだ。
  
「主としてお前に命じる! 行って、おちびを……<監視者>ヴェルヴァイドのつがいを守れ!」

真っ青な髪を乱し。
両手で頭を抱え、身を丸めて叫ぶ。

「全ての者から守るんだ! 人間からも、竜族からもだ!! 例えそれが俺……四竜帝達であろうと、全力で守れっ!!」

それは。

「カイユッ、カイユ! おちびを利用しようとしてるのは、人間だけじゃないんだっ……竜族だって……俺達は……四竜帝は……おちびを……竜族のために……あいつをっ、あいつを!!」

<青の竜帝>としてでは無く。

「ヴェルはっ、ヴェルはあいつがいないと駄目だからっ! ……俺じゃ駄目なんだっ、俺じゃヴェルはっ……だからっ、だから!」

ああ、そうか。
陛下が未だにつがいを得ていないのは。
“情”が“恋”を、飲み込んでしまっているからなのかもしれない。

「はい、我が君」

カイユは立ちながら刀を抜いた。
その所作は、夜を裂く月光のように美しい。
俺は見惚れ、その刃をこの身に受けたいとさえ願ってしまう。

「我が主、<青の竜帝>ランズゲルグ」

雪を照らす陽の光を集めたかのような銀髪を無造作に掴み、カイユは刃をあてた。

「貴方に永遠の忠誠を」
「!? ハニー、待……っ!!」
「行くわよ、ダルフェ」
「え、あ……ああ」

口が開いたままの俺を従え、カイユは扉に向かって歩き出す。
その背を押すように、嗚咽が跳ねる。
俺が愛してやまない銀の髪を抱きしめて。
小さな小さな青い竜が、声を殺して泣いていた。

 



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