四竜帝の大陸【青の大陸編】
りこの黒髪を梳くカイユに、りこが申し訳なさそうに言った。

『カイユ、ありがとう。ベットに運んでくれましたね。重い、ごめんなさい』
『いいえ。竜族の私にとってトリィ様の体重では羽毛と大差ありませんよ。さぁ、化粧直しも終わりましたから……』

我に視線を流し頷いて……りこを椅子から立たせ、その細い肩にショールをかけてカイユは退室した。
あれは賢い女だ。
こちらの意図を察しうまく話を合わせ、りこの【思い違い】を肯定して不安を与えぬように振舞うことが出来る。
りこはカイユを見送ると我を見て言った。

『人型のハクちゃん、大きい。私、小さい。カイユとハクちゃんはちょうどの感じ。私……』

我に歩み寄り、見上げて言う。

『私、小さい。美人ちがうよ? でも、いいの?』

りこが何を言いたいのか、我には分からない。
小さい……背が低いということか。
なるほど。

この身長差ではりこの首が辛そうだ。
りこはセイフォン人よりも小柄で、華奢な身体をしている。
黄の竜帝の大陸に住む少数民族が、人種的には近いかもしれん。

人間より体躯の大きな竜族と並ぶと、まるで子供のように見える。
我は両膝を床に着き、りこと視線を合わせた。
   
『こうすれば、良いか?』

これで首が辛くないか?

『え、えっと! そのっ。か……顔、顔が!ちかっ』

顔?

『やはり顔……容姿が嫌か? 黒の竜帝の大陸では顔を変える外科手術が進んでいる。だが再生能力がある竜族には無理があってな。りこが好む容姿に変えるのは難しいのだ。すまない』
『ち、ちがう! 意味、ちがう。えっと、その、触っていい? 顔』

触ってくれるのか?
 
りこが我に。
触る。

こういう気持ちは……嬉しいという感情だ。
りこに会ってから知った。
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