四竜帝の大陸【青の大陸編】
陛下と俺は旦那と違って術式を使えないので、離宮までの道のりは自力での移動になる。

術式は人間のものだ。 
竜族はあらゆる面で人間より優れているが、この二点では脆弱な人間共に負けている。
繁殖力。
そして術式という【力】。
竜族が世界の覇者として君臨しない……出来ないのはそのためだ。

最も、人間と違い竜族は殺戮を好まない穏やかな生き物ということもある。
人間から見れば異論もあるだろうが。
他種族を虐げてまで繁栄しようなどと野望も無く、人間との共存を選んだ。

人間は同属同士殺しあうが、絶対数が少ない竜族は同属殺しはしない。
まぁ、例外もある。
旦那と四竜帝、それに……俺はそれも『仕事』だから、殺せるけどな。
<白金の悪魔>か……そういや、随分と久しぶりにそれを聞いたなぁ。

『陛下、人間は勝手ですねぇ。旦那を自分達の都合で神にしたり悪魔にしたり。ダルド王子は旦那が姫さんの名を口にしたもんだから<白金の悪魔>が<監視者>だって気づいちまった。旦那は世界を守る存在なんかじゃないって事を』
『<監視者>が秩序のために‘強く高慢な竜族‘と人間の均衡を守ってるなんて、どっかのいかれた預言者の妄想だ。数百年前からそれを信じている人間のなんと滑稽で哀れで……幸せなことか。だが、それでいい。幸せなままで』

世界最強の竜が人間の味方だという、おめでたい勘違い。
あの人は人間が滅びようと気にしない。

それは……竜族に対しても同じ。
竜族の姿をしているが、旦那は‘違う’のだ。
術式を人間以上に使いこなし、竜族すら超えた存在。

『旦那はいったい、何者なんですかねぇ~陛下』

神。
昔はそう考えたこともあったが。

『さあな。ま、神様なんてお綺麗な存在じゃねぇのは確かだな』

これは俺も素直に頷ける。
つがいの姫さんと風呂に入り続ける為にも、人型を知られたく無かったなんて。

そんな神様、嫌だ。

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