最後の恋、最高の恋。

あの時、私には私にしかないいいところがあると言ってくれたお姉ちゃんだけれど、やっぱりお姉ちゃんは苦手なものが何もないんじゃないかってくらい完璧だと思う。


料理も、裁縫も、仕事も、大きなことから小さなことまで、どんなことでも完璧にこなしてしまうのは、生まれ持った才能でお姉ちゃんが持つべきものなんだと分かるけれど、やっぱり私の分も少しお腹の中に置いて行ってほしかったなって、思う。



「お姉ちゃんって本当に器用だよね」


休日の午前中から、お姉ちゃんの部屋で私の方が早く宮田さんから習い始めたレース編みを一緒にしている。

私はレース針をぎこちなく動かして、宮田さんから送られてきたキッドの説明書を何度も見ながら四苦八苦して少しずつ編んでいるのに対して、お姉ちゃんはレース針ではなくてシャトルという変な道具を使って説明書にも目をやらずにすいすいと泳ぐようにどんどん編み上げていくから、思わず編んでいた手を止めてつい溢してしまった。


「うーん、これって慣れだし、同じことの繰り返しだし編み物と違って編み棒使わなくて済むから楽なのよね」

「……」


習い始めて一年以上経っている私を目の前に、そんなことを言わないでほしい……とは言えずに、「すごいね」としか口にできなかった。


その間にもどんどんと形を成していくお姉ちゃんのレースは、あんなに早く手が動いているとは思えないほど綺麗な仕上がりだ。




つい自分の手元を見て溜息がこぼれてしまう。


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