30才の初恋
思い出そうとすると頭が痛くなった。




園長先生が私に近づいて来た。




「明日美ちゃんはあの雨の日、滑り台から落ちて気を失ったのよ。病院に運ばれ大事にはいたらなかったけど、その時の記憶がないと泣いていたわ。」




滑り台から落ちただなんて、記憶にはないし、全てにモヤがかかってるみたいで見えない。




あのビードロをどうして源ちゃんの物と思ったのだろうか。




《ビードロあげるから、僕のお嫁さんになると約束して。》




確かに源ちゃんがそう言って、私は頷いたはず。




もしかしてビードロが2つあるとか?




ビードロが割れる音と、私が泣いてる声。




源ちゃんが泣いて謝ってる姿が見えた。




園長先生がくれたビードロを持って、滑り台に登ると雨が降って来た。




源ちゃんが私を追って来て、逃げよとして滑り台から落ちた。




モヤが晴れた。源ちゃんが泣いて謝って、違うビードロを私にくれたんだ。




結婚の約束なんかしていない。



だってそこには斗真がいて、源ちゃんを殴ったんだから。




斗真は、いつも私のヒーローだったのだ。








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