30才の初恋
藤川様が私の様子を見てアハハと、豪快に笑う。




そんなに笑わないで下さい。




襖が開く、遅くなった。そう言って入って来たのは斗真だった。




斗真が藤川様と私の顔を交互に見る。




「2人で何を笑ってるんだよ。俺の運命がかかっていると言うのに。」




「明日美ちゃんは斗真には勿体ないよ。僕の嫁にしたいくらいだ。」




藤川様のお嫁さん。




宗次郎と結婚したら、斗真の母親になるし。




藤川様と結婚したら、私は斗真のおばあちゃん。




それはいくらなんでもだなんて、ない頭で必死に考えていると、明日美の大バカヤローと頭をどつかれた。



痛い。




「斗真、明日美ちゃんが可愛くて仕方ないみたいだな。早く嫁にしないと、誰かに持って行かれるぞ。」




藤川様笑い過ぎです。




「じいちゃん真面目な話なんだから、もっと真剣になってくれよ。明日美は可笑しな妄想は止めろ!」




私はいつだって真面目に真剣に生きてるのに。




生きていれば必ずいい事があると信じて来た。



30年は長かったな。















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