30才の初恋
中々斗真が戻って来ない。斗真の部屋は、無駄に広いだけで物が置かれていない。




大きなテレビとソファ-があるだけ。




仕事は何処でするのだろ。部屋にあるもう一つのドアを開けると、書斎だった。



パソコンもあるし、ここが仕事場なのかな。机の上に無造作に置かれた小さな箱、中身は指輪だった。




これはなんなの?




イニシャルが刻まれていた、Tは斗真、Sは誰?




斗真には指輪を贈る相手がいるって事?




やだ、手の震えが止まらない。




斗真には本命がいるのに、私に告白しようとしてるの。




私をからかって楽しんでる訳、酷いよ。




「明日美、何見てるんだ。それは違う、イニシャル「聞きたくない。もう私を振り回すのは止めて!指輪を贈る人がいるのに、斗真なんて嫌い!」




いつも、いつも、こうなんだから期待させて振るんだから、たちが悪すぎる。




どうやって玄関までたどり着いたか覚えていない。




門を出た所に宗次郎と菜歩ちゃんがいた。




宗次郎の顔を見たら泣けて来た。




私は本当にバカだね。



バカ過ぎで、笑えて来た。



笑いながら、涙が溢れた。













< 95 / 308 >

この作品をシェア

pagetop