犬と猫…ときどき、君

また俺が、胡桃の人生をめちゃくちゃにするワケにはいかなくて、自分がやっていることが、本当に正しいことなのか、正直なところ最近解らなくなっていた。

「ふー……」

天を仰いだまま長く息を吐き出せば、心の中の重たい何かが、少しだけ冷たくなり始めた空気に溶けていく。


ゆっくり立ち上がり、部屋に戻れば、時計はもう3時近くを指していて、日付の表示は“9月10日”。

その表示に、思わずスマホに手を伸ばし……

【29歳おめでと。めでたい年齢かはわかんねぇけど】

作ったのは、そんなメッセージ。

「……」

だけどそれが、胡桃に届くことはない。

消去ボタンを押した俺は、溜め息を吐いて静かにスマホを置いた。


たった一言のメッセージ。しかも、冗談混じりのそのメッセージ。

それさえも送れない俺は、もしかしたら、もう胡桃から1番遠い存在なのかもしれない。

――胡桃と出逢って、11年。

「11年の片想いって、どんだけだよ」

小さく漏れ出てしまった笑いを、噛み殺す。


それでもさ。

やっぱり俺は、胡桃が好きなんだ。

< 377 / 651 >

この作品をシェア

pagetop