犬と猫…ときどき、君


「――……っ」

ギュッと私の手を握ったのは、城戸の熱を持った熱い手の平。

私の手を掴んだまま、それを自分の口元に運ぶと、そこにそっと……キスをした。


――ドクン。

大きく跳ねた心臓と、見開いたままの瞳。


目の前で、伏せていた瞳をゆっくり開いた城戸と視線がぶつかる。


お酒のせいなのか、いつもよりも水気を多く含んでキラキラと光る、その真っ黒な瞳に息を呑んで、目が離せなかった。


私の視界の端には、ゆっくりと伸ばされる城戸の綺麗な指先が映り、魔法なのか、呪いなのか。

よく分からないけれど、そんなものにかかったみたいに、私は身動き一つ出来ずにいた。


――だけど、次の瞬間。


「んっ……!!」

驚いて見開いた目の前には、城戸の伏せられた瞳。


後頭部に回された城戸の手が、私を引き寄せて、気が付いた時には、唇が重なっていた。


少し乱暴な手の動きとは裏腹な、昔と変わらない優しいそのキスに、血液が一気に湧き上がって、体がカッと熱くなる。


それだけでも、頭の中は十分パニックだった。

それなのに……。


ゆっくりと離された、城戸の唇。


「胡桃」

城戸が、息を飲む私の名前を静かに呼んで、視線が絡まるのが早かったのか、そうなるのが早かったのか……。


その唇が、もう一度私の唇を塞ぎ、返事を返そうと、わずかに開いたその隙間から、柔らかな舌を滑り込ませる。


「ん……っ!!」

息が苦しくて、とにかくそこから離れたくて。

その胸を押し返そうとする私の腕を片手で制した城戸は、何度も何度も角度を変えながら、深く私の口内を犯していく。


もう嫌だ。

だってこんなの、苦しすぎる。


「――……っ」

胸が痛くて、泣きそうで、苦しすぎる。

だから、もうやめて。


――もうこれ以上、私の心に入り込まないで。


< 428 / 651 >

この作品をシェア

pagetop