犬と猫…ときどき、君


「はぁっ!? 何それ!! あんたバカじゃない!? 何でそうなるの!?」

「……」

「だから言ったじゃん!! 胡桃は城戸が好きなんだって!!」

「……うん」

「それなのに、自分を好きだって言った城戸に振ってもらって!? それだけじゃ飽き足らずに、城戸の友達の今野先生と付き合うって……何それ!? アホでしょ!!」

怒りで頭を掻きむしりながら、マシンガンのように言葉を吐き出すマコに、私が何かを言い返せるはずもなく。


「てゆーかさ、何で事後報告なの!? もっと早くに相談するとかできないワケ!?」

「だって、相談したら反対するでしょ?」

「当たり前でしょ!! バッカじゃない!?」

「……そんなの、私が一番分かってる」


沖縄から帰ってそのままの足でマコの家に立ち寄って、あった事を洗いざらい話したら、ものすごく怒られた。


ものすごく怒られて、


「……城戸には?」

「まだ言ってない」

「あっそう」


それよりもたくさん、悲しい顔をされた。


あの後、ホテルのエントランスまで私を送ってくれた今野先生は、私に聞いたんだ。


「城戸には俺たちの事は話すの?」

私を真っ直ぐ見つめる瞳は、いつも通り。

きっと今後の事を踏まえて聞いただけであって、私の気持ちを試そうだとか、そういう意図はないのは分かっていた。

それなのに、一瞬言葉に詰まってしまった私。


「うん。機会を見て、話すよ」

何とか笑ってそう言った私に「俺から話そうか?」と、言ってくれたけど、私はそれに対して、首を横に振ったんだ。


春希への想いから逃げ出したい一心で、自分が招いたこの状態。

今野先生には、十分すぎるほど助けてもらったんだから、それくらいは逃げないで自分でしないといけないと思った。


だけど、春希とその話をするタイミングなんて、当然ながら作らないとやってこない。

作ろうにも、やっぱり難しいし、気まずい空気は消えないままだし。


帰りの飛行機でも、お互いとくに言葉を交わすこともなく、目の前の小さな画面に映し出される映画をボーっと眺めていた。

空港に着いたら着いたで、城戸はそのまま行く所があるって言うから、そこで別れて……。

結局話せないまま。


だけど、少し時間を置いた方がいいのかもしれない。

ここ数日、バタバタと色んな事が起りすぎたせいで、正直なところ、自分でも頭の中の整理が追いつかないんだ。


こんな時に、春希に自分の気持ちを上手に話せるとも思えないし……。


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