犬と猫…ときどき、君


――胡桃は本当に分かってない。


だって、あの“宮崎航太”だぞ?


今まで何回か会ったことのあるらしい胡桃は、平気な顔をして「カッコ良かったよ」なんて言ってたけど……。


そうじゃないだろ!?

どうして女って、男のこういう気持ちが解らないんだ!?


「……」

いや、胡桃はかなり分かってる方だとは思うけど。


「じゃー、行こっか」

そう言って笑う胡桃の、準備開始から出掛けるまでにかかる時間なんて、十分ちょっとだし。


「……」

「何?」

「別にー」


化粧なんてたいしてしていないのに、それでもやっぱり可愛いし綺麗だなぁなんて。

調子に乗るから言わないけど。


「途中で何か土産買って行こう」

「遥人への賄賂《わいろ》なら、駅前のゼリーがいいと思うよ」

「……よし」

「あははっ!」


君が楽しそうに笑いながら掴んだ携帯には、キラキラとした白い光を放つストラップ。


「あー……。そう言えばね、これ一箇所切れちゃったの」


時間はどんどん過ぎ去って、環境も変わって。

だけど、変わらない物もたくさんある。


「そっか。じゃー、今度篠崎たちに会いに行く時に、お店に寄って修理してもらおう」

「うん!」


胡桃と俺の、途切れた時間は繋がって、あの日、目の前で笑っていた店員さんとその奥さんのように、同じ時間を歩んでいる。


「やっとあの店員に紹介出来るな」

「え?」

「……何でもない。さっさと行くぞ!! で、生宮崎を拝むんだ!!」

「もー!! いつまで経っても子供なんだから!!」

「いいだろ?」

「は?」

「そのキャップに“キュンッ!”とくるくせに」

「……っ」


これからは君の隣を、ずっとずっと――……。





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