面倒くさい恋愛劇場
 もし、ここにいるのがわたしじゃなければ、そういうこともありえるのかもしれないけど。
 
 するりと踵を返して、駅に向かう。
 しばらくは、行動範囲も別の場所に移した方がいいかなぁ、とか、そういうことを考えていたのに。


 
 「…………」

 家のポストに投げ込まれた『彼と別れて』『彼と別れて』『彼と別れて』という手紙。
 最初は、彼と話をした次の日に。またその翌日に。そして、かれこれ10日間ほど続いている手紙攻撃。
 ああ、これが彼を悩ませているストーカーかと思いながらも、あの日の出来事を観察しているなら、彼女じゃないことくらいすぐにわかるはずだと思って、あまり気にしていなかった。

 そのうち止むだろう、と放っておいた矢先に、届いた手紙はわたしを絶句させた。
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